出口の無い部屋

要はマジカオス。 初めていらっしゃった方はカテゴリーの〈はじめに〉をお読みください。

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【ひとりぼっちの太陽・序】 

やりたかったんだ。
理由はそれだけで十分だと思いたい。

また、自分の首を絞めることになっても。

駄作警報発令中。
このシリーズは全体的に多少グロい表現などがあるかもしれないので注意。



ひとりぼっちの太陽  序

      じりじりと焦がす熱線。
      照りつけられた花は俯き。
      ひとりぼっちの太陽。
      生まれたときに孤独を定められ。
      空に独り。
      見つめてくれるものはもういない。
      ほんとうにひとりぼっち。



 さぁ、戦いの始まりだ。
 生き残りたくば剣を取れ。
 「命の水」を奪い取れ。
 ああ、そうして今日も。
 生気の渇いた大地に。
 「死の水」が流れるのだ。


 自軍で、凱歌があがった。勝利を掴んだことを知ると青年は大剣を下ろした。
 ツヴァイハンダー――180センチを超える両手剣――の刀身を赤い水が下へ下へと這っていく。青年は得物に土を被せはじめる。その表情は安堵と少しの口惜しさが滲んでいた。
 歳は二十代前半ほどで、深い青の瞳が印象的だ。
 土を落とした剣を腰に巻いた布で拭う手は、無骨なもので、男らしさをにじませている。が、その肌は日焼けを知らぬ白いそれだった。ほどほどに肉のついた体の各所には玉の汗が浮かんでいる。
 不意に前方の人々がざわついた。
 青年は何かを察して顔をあげ、手入れもそこそこに剣を肩に吊る。
「シン、死んでなかったのか」
 低い、凛とした声。青年の口端がにわかに嬉しそうにほころぶ。
 前方の人波がモーセの海のように分かれていく。皆、そこを通る男を恐れ避けているのだ。返り血にまみれ鎧を朱に染めた青年を。
「ロウ」
 ぱっくりと割れていく人波に従わず、シンと呼ばれた青年は血染めのモーセに駆け寄った。
「お前こそ無事かよ?」
一瞬何を言われたのかと黒髪を傾け、しばし考え首肯した。
「ああ」
 それを聞いてシンがそうかと笑った。
 細い肩を覆う鎧からは今も朱い血が流れ落ちていた。かつロウの頭にあった筈のサーリット――バイザー付きの半球形の兜――はなく短い黒髪は赤に汚れ、喉を庇う部分のプレートから頬にかけては特に血に濡れていたため、外傷の判断がつき兼ねたため彼は心配したのだった。
「ロウが出張った(でばった)せいで左翼から敵がなだれてきただろー。俺も前で楽しみたかったんですケド」
 それを聞いた黒い双眸が不愉快げにすがめられる。
「眼前に必死なお前が悪い」
来る敵を切り捌くのに手間がかかったシン自身が悪いとロウは言い捨てる。
「ひっでぇの」
「事実だ」
 端から見たら口喧嘩のようなやり取りだが、ロウは不快ならばすぐに会話を打ち切るし、シンは喧嘩っ早いがわざわざ嫌がらせに喧嘩をふっかけることはない。お互いにそれなりの友好があるのだ。
 シンはロウの腰を見た。正確にはロウの腰にあるバスターソード――115センチ程度の片手・両手兼用の剣――を、だが。鞘に収まり刀身は見えないが、滑り止めに柄に巻いた布は用を成さぬほど血を吸っている。
「何処まで切り込んだんだ?」
「さぁ」
「あー覚えてないって?」
「ああ。愉しいから」
 シンには白に近い黄色の目もとがわずかに紅潮したように見える。もっとも全身血まみれなので確証はないことだが。

東洋系の綺麗な顔して戦が愉しいときたもんだ。
だからYaksa(ヤクシャ)、夜叉、戦狂い、戦狂なんて言われるんだ。
 とシンが不満げに口内で呟いていると、
「お前は――だろうな」
 ぽつりとロウが漏らした。
 シンは聞き取れなかったが、珍しく長い言葉だったことが気になり聞き返した。
「は? いやいや何が?」
「空耳だ」
 ロウは相変わらず取り付く島もない。
「え、ごめ。マジで何? 気になるんですけど」
 シンはその長身を前かがみに倒し、聞いていなかったことを謝罪し追求する。
「煮立ったな」
「俺は普通だろ」
「異常な普通だな。戦好きが」
「戦狂サマにいわれたくないね。大体お前ね、あの時……」
 二人は言い争いながら本陣へと帰っていった。




      「死の水」は流れ、
      「命の水」は干されていく。
      世界は確実に焦れていた。
〈モノカキ@長〉 | トラックバック(-) | CM(0)
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