出口の無い部屋

要はマジカオス。 初めていらっしゃった方はカテゴリーの〈はじめに〉をお読みください。

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【サンダーソニア】 

花言葉:祈り、望郷

可愛いベルの形をしたオレンジの花です。

完全復帰じゃないけれど。生きてますよな存命報告で。

今回は祈り。
長めです。暇な方のみ追記からドウゾ。

今日も一つ、お祈りさせてください。

わたしの願いが――……

サンダーソニア
種というのは有利な形質を次の代へ次の代へと引き継がせる。
そうして時折、他の人間より優れた、俗に言う〈才能〉のある〈天才〉が生まれる。

〈天才〉が幸せだと、わたしは思わないけれど。

 礼拝の終わった学校内の教会は静かで落ち着く。深呼吸をすると、わたしよりも遥かに年月を経た石材の匂いがした。ステンドガラスから差し込む陽光は本来の鋭さを失い、淡い光になって、室内を染めていた。
 あと数分で授業が始まるのだろう。教室に行く気はないが、そんなことをおぼろげに考える。
 考えていくと思考はどんどん流れていく。まるで流れに身を任せるささ舟。止まらない。あとは沈んでいくだけ。

 〈天才〉と呼ばれ始めたのはいつからだったか。忘れた。
 ただ、やれば大抵のことは人よりも上手に出来た。中でも、歌と運動と勉強は得意だった。他の人の追随を許さないぐらいに。
 世界は広いから、わたしみたいな人間は結構いるんだろうけれど。俗に言う〈天才〉が身近にいるっていうのは違うらしい。
 わたしは〈特別〉
 クラスでは、わたしは「虎橋さん」と呼ばれる。同じ歳の友達を愛称や下の名前で呼ぶのに、わたしは「虎橋さん」だ。先生も他の生徒は苗字を呼び捨てで呼ぶことが多いのに、わたしは「虎橋さん」だ。
 「虎橋さん」は絶対に埋まらないと向こうが決めた距離だ。
 そこには同じ目線なんてない。向こうはこちらを見上げている。
 神さまか天使さまか、ありもしない偶像を求めてる。
 わたしだって〈人間〉なのに。同じ〈人間〉なのに。

 くしゃりと手の中の紙――「天才 今回も」の見出しを掲げた学校新聞――が悲鳴をあげた。
 手を抜けばよかったのか。否、そうしたら、何を言われるか分からない。
彼らは勝手に見上げておいて、自分たちの期待・偶像が壊されかければ今度はわたしを見下すのだろうから。そんなことよりもなにより好きなことで手を抜くなんて出来ないのだが。好きなことが嫌いになってしまうから。
「おい」
 そこで流れはせき止められた。後ろから声を掛けられた。
「授業始まってるぞ」
 振り返れば、男子生徒がいた。いつからそこにいたのか、自分だって棚上げじゃないかという言葉は喉の奥が乾いて出せなかった。鋭い視線がわたしを射抜く。
「礼拝中か?」
「……ええ」
時間をかけて声を漸く絞り出した。
 彼は小さく首を傾げた。長身の男のすることじゃない。
「何を?」
「……わたしの願い」
それだけ答えて、鞄を手に取った。
 これ以上質問に答える気はない。立ち上がって、彼の脇を走り抜けようとする。
 しかし、彼はわたしの手首を掴んで引き止められた。力を込めすぎた痛いものではないけれど、決して振りほどくことも出来ない力。
 抗うことの出来ない力加減。
「Last. 何を願った?」
 英語の発音が綺麗だった。そんなどうでもいいことを考え付くほどわたしの思考は鈍っていた。状況を読み取ろうと懸命になって逆にどんどん鈍っていく。だから、答えてしまったのだろう。

「わたしの願いは、――……〈普通〉になりたい、よ」

 小さめな声で零された言葉に、掴んでいた力がふっと緩んだ。
 わたしは手を振り解いて、そのまま外へ飛び出していた。


これは才能あるない天才だなんだの話に逃げてますが、でも、普通になりたいとか、勝手に決められた(或いは勝手に決めた)距離っていうのは誰にでもあるのではないかと。
〈モノカキ@長〉 | トラックバック(-) | CM(0)
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